2022/08/15 10:18
「買春客の根性を叩き直す」テキサスの買春客更生学校に潜入してみたら
米国では近年、性産業の取り締まりに変化が起きている。テキサス州で警察のおとり捜査や売買春防止プログラム、性産業撲滅団体を取材した筆者は、その現状を「自分たちの魂を救済するために、人の人生を壊していく、そんなモラルパニックが起きている」と表現する──。
狙いは「売春する女」よりも「買春する男」
昼食はピザのデリバリーだったので、警官たちの武器は手の脂汚れですっかりギトギトだった。もっとも、その武器とは銃のことではない。銃のホルスターは、この道路沿いのモーテルの部屋の片隅にかけてあった。
このおとり捜査で活躍するのは、警官たちのiPhoneなのだ。彼らはメッセージを打ち込み、獲物がひっかからないか期待に胸を高鳴らせていた。
「ナスのこの絵文字で何を言いたいのか、オレにはわかるけれど、検察はこれをセックスの同意だと受けとってくれるのかな」
こう言うデット・ジーンは、米テキサス州ブラゾス郡で行われたこのおとり捜査に参加した最年少の警官だ。ナスの絵文字はセクスティングでよく使われる記号だ。中年の警官が仕掛けたおとりに誰かが食いついたら、そこからは迫真のメッセージを打ちこめるジーンの親指の出番だ。
米国の警察は、テキサス州など数多くの州で定期的にこの種のおとり捜査をし、買春客の男たちを逮捕する。米国では、ネバダ州内の10郡をのぞくと、成人同士が合意のもとセックスを売ったり買ったりすることは、いまも法律違反だからだ。
私がこの現場にいるのは、米国の警察による性産業取り締まりの最前線を取材しないかと招かれたからだった。近年、性産業の取り締まりのあり方が大きく変化しており、売春する女よりも買春する男を捕まえることに重点が置かれるようになっているのだという。
突然やってきた「逮捕の瞬間」
買春客を捕まえる前に、まずはホワイトボードに今日の成果の予想が書き込まれた。逮捕者数は何人になるのか。逮捕者のうち何人が泣き、何人が違法薬物を所持し、何人が銃を不法に所持し、何人にすでに逮捕状が出ているのか。私がその予想の数字を書き写していると、部屋が突然、騒がしくなった。
警察の無線から「来るぞ」という声がして、全員が持ち場についたのだ。
私は現場の責任者ポール・マホーニー刑事に手首をつかまれ、トイレに引っ張り込まれた。トイレでは、マホーニーと大柄な警官が銃のホルスターを装着し、手錠を構えた。
モーテルの部屋の入り口では、前出のジーンともう1人の警官がドアの陰に待ち伏せていた。ドアを開けたのは、品のないメイクをしたジーンズ姿の女性警官だった。
「どうぞいらっしゃい」
女性警官はそう言って買春客ににっこり挨拶してから、後ろに下がり、部屋の中に入った。これは州検察官の指示に従った動きだ。逮捕が無効にならないためには、買春客の足がドアを越えて、部屋にちゃんと一歩入っていなければならない。州検察官は口を酸っぱくして、そのことをマホーニーに伝えていた。
男の足が一歩、部屋に入ると、その後の動きは迅速だった。私が急いでトイレから出た頃には、買春客にはすでに手錠がかかっていて、すべてのポケットが裏返されていた。
警官が余罪につながるものはないかと探していると、マホーニーが大声を出した。
「ファック! こいつ、小便をもらしやがった」
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